唐木仏壇と浄土真宗 〜本願寺派・大谷派の仏具と信仰のかたち〜

唐木仏壇と浄土真宗 〜本願寺派・大谷派の仏具と信仰のかたち〜

日本の伝統文化の中で、仏壇は家庭の「祈りの場」として長く大切にされてきました。

なかでも「唐木仏壇(からきぶつだん)」は、その美しい木目と職人の技が光る逸品として、多くの人々に親しまれています。

そして、唐木仏壇は「浄土真宗」の信仰の場にも深く関わっています。

本願寺派(西本願寺)・大谷派(東本願寺)という二つの大きな流れを持つ浄土真宗において、どのように仏壇が受け継がれているのか――。

今回はその歴史と特徴をたどりながら、現代に生きる祈りのかたちを見つめてみましょう。

1.唐木仏壇とは? 〜木の美と職人技の結晶〜

唐木仏壇とは、黒檀(こくたん)・紫檀(したん)・鉄刀木(たがやさん)など、希少で高級な銘木を素材とした仏壇のことをいいます。

「唐木(からき)」とは、中国や南方から渡ってきた木材を指す言葉で、古くから家具や茶道具にも用いられてきました。

漆や金箔で飾るのではなく、木そのものの質感や木目の美しさを生かすのが特徴です。

そのため、落ち着いた色合いと重厚感があり、長く使うほどに味わいが深まります。

2.浄土真宗と仏壇 〜金仏壇から唐木仏壇へ〜

浄土真宗では、阿弥陀如来をご本尊としてお迎えし、家の中でもお念仏の教えに親しむ場として「仏壇」が重要な意味を持ちます。

本来、浄土真宗の家庭では「金仏壇(きんぶつだん)」が主流です。

西本願寺や東本願寺の本堂のように、金箔を施し、極楽浄土の荘厳さを表すためです。

しかし近年は、地域により異なりますが住宅の洋風化やコンパクト化が進むなかで、唐木仏壇を選ぶ門徒(信徒)が増えています。

金箔のかわりに木のぬくもりを感じられる唐木仏壇は、リビングや洋間にも自然に溶け込み、

「シンプルで落ち着いた祈りの場」を求める現代の感性にマッチしています。

浄土真宗の「本願寺派」と「大谷派」の主な違いを、かんたんな表にまとめます。

​この2つは、京都にある本山(ほんざん・本部のお寺)の場所から、それぞれ「お西さん」「お東さん」と呼ばれて親しまれています。
※これらは伝統的な違いです。最近の小さなお仏壇や、地域によっては異なる場合もあります。

⛩️ 本願寺派(お西)と大谷派(お東)の主な違い

比較する点浄土真宗本願寺派 (じょうどしんしゅうほんがんじは)真宗大谷派 (しんしゅうおおたには)
通称 (よびな) お西さんお東さん
本山 (ほんざん)西本願寺 (龍谷山 本願寺)東本願寺 (真宗本廟)
ご本尊(掛け軸)の違いお仏壇の中央(ご本尊)
「阿弥陀如来(あみだにょらい)」

お仏壇の中央(ご本尊)
「阿弥陀如来(あみだにょらい)」
両脇に飾る両脇軸
(向かって右)
親鸞聖人(しんらんしょうにん)の絵像

「十字名号」(じゅうじみうごう)という文字の掛け軸

両脇に飾る両脇軸
(向かって左)
蓮如上人(れんにょしょうにん)の絵像
「九字名号」(くじみょうごう)という文字の掛け軸
お仏壇の内部の
一番分かりやすい違い 
宮殿(くうでん)の柱が金色
一重屋根(ひとえやね)
(比較的シンプルな造り)
宮殿(くうでん)の柱が黒塗り
二重屋根(にじゅうやね)
(本山・東本願寺の「御影堂」を模した豪華な造り)
仏具(飾り方)の違い燭台 (ろうそく立て)
比較的シンプルな形のものが多い
(色は黒っぽい「宣徳色」など)
燭台 (ろうそく立て)
鶴と亀(つるかめ)の飾りが付く
(色は金ピカの金メッキや「磨き」)
香炉 (こうろ) 
「玉香炉(たまごうろ)」
(丸みがあり、青磁)
香炉 (こうろ)
 「透かし香炉(すかしごうろ)」
(青磁)
花瓶 (かびん)
宣徳色(せんとくしょく)など
(黒っぽく、落ち着いた色)
花瓶 (かびん)
 金メッキや磨き(みがき)
(金色で、華やかな色)
お西仏具
お東仏具

門徒の広がりと地域性

浄土真宗は日本全国に信徒(門徒)を持つ宗派です。

文部科学省「宗教年鑑2023」によると、

浄土真宗本願寺派:約600万人

真宗大谷派:約550万人

この二つの宗派だけで、日本の仏教信者の中でも最大級の信徒数を誇ります。

特に北陸地方(富山・石川・福井)や東海地方、近畿地方に門徒が多く、

これらの地域では「一家に一台仏壇がある」といわれるほど信仰が根付いています。

関東では、伝統的な金仏壇よりも唐木仏壇やコンパクトなモダン仏壇を選ぶ家庭が増えており、

都市型の新しい祈りのスタイルとして注目されています。

押さえておきたいポイント

一番大切なことは、どちらも教えの根本は同じということです。

​ご本尊 (信仰の対象): どちらも「阿弥陀如来 (あみだにょらい)」です。

​教え: どちらも「親鸞聖人 (しんらんしょうにん)」の教え(阿弥陀さまを信じ、お念仏「南無阿弥陀仏」をとなえる)を大切にしています。

​もともとは一つでしたが、江戸時代に徳川家康の政策などにより、お寺が西と東の2つに分かれたのが始まりです。そのため、儀式やお経の読み方(節回し)などに、少し違いが生まれたものです。

唐木仏壇がもたらす「祈りのかたち」

上記で説明したと通り、浄土真宗の仏壇といえば本来は金仏壇ですが。

唐木仏壇の魅力は、何よりも「自然なぬくもり」にあります。

木の香りや質感、光のあたり方で変わる木目の表情――。

それらが、阿弥陀さまに手を合わせる時間をいっそう穏やかで心地よいものにしてくれます。

浄土真宗の教えは、「南無阿弥陀仏」と称えることで、すでに救われているという安心の教え。

その信心を日々の暮らしの中で確かめる場所として、仏壇は家族をつなぐ中心にあります。

唐木仏壇は、伝統の形式を守りながらも、現代の暮らしに寄り添う新しい祈りの空間をつくり出してくれるのです。

まとめ

唐木仏壇は、単なる「木の仏壇」ではありません。

そこには、職人の手仕事と、家族の祈り、そして親鸞聖人の教えが息づいています。

本願寺派・大谷派それぞれの信仰のかたちを尊重しながら、

ご自宅に合った仏壇を選ぶことは、「自分らしい祈り」を大切にする第一歩です。

木のぬくもりに包まれた唐木仏壇――

それは、現代の暮らしの中に、静かな安らぎをもたらしてくれるます。


翠雲堂本店では、今回ご紹介した唐木仏壇を、都内随一の規模で展示しております。写真や文章だけでは伝えきれない、本物の唐木仏壇が持つ重厚感、木の香り、そして職人の息づかいを、ぜひ五感で感じてみてください。
専門知識豊富なスタッフが、お客様一人ひとりに最適な唐木仏壇選びを、心を込めてお手伝いさせていただきます。
皆様のご来店を、心よりお待ちしております。
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